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2026 October
No.892
特集共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ共助成長社会で取り組むこれから【後編】
CLOSE-UP 提言
地域共創委員会地方自治を持続可能にする新たな基盤「連携・分業型」の自治体間連携を地方自治・地方創生の新たな標準に
「私の一文字~中国委員会委員長井上慎一~」より

私の一文字
中国委員会委員長井上慎一
ANA ホールディングス特別顧問
「縁」は未来を動かす力
会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。今月は井上慎一中国委員会委員長にご登場いただきました。井上今日の自分があるのは、これまでのご縁のおかげだと心から感謝しています。私自身、変化の多い人生の中で、縁とは「常に変化し、影響を与え続けるもの」だと実感しています。時に太く、時に細くなりながらも今に至るまでつながっている——この書を拝見したとき、まさに自分が抱いていたイメージが見事に表現されていて驚きました。岡西「縁」という文字は、糸の端から次につながっていく様子を思わせる言葉です。緩急がつきながらも絶対に途切れない「縁」を思いながら書いたので、そのように見ていただき、とてもうれしいです。井上さんご自身も、さまざまな縁を力強くつかんだり、しなやかに継続させてこられたりしたのではないでしょうか。井上私が初代社長を務めた日本初のLCC 、 Peach Aviation の成功は、海外を含めたさまざまな人とのご縁なくしては成し得ませんでした。当時は格安航空会社のノウハウがまったくない、ゼロからのスタートでした。そこで、世界的レジェンドであるライアンエアー初代会長のパトリック・マーフィー氏に、面識もないまま押し掛けて教えを請い、アドバイザーになっていただきました。後に「熱意に負けた」と仰っていただきましたが、必死の思いで「縁」をつかみました。彼とは今なお、相談にのっていただく関係が続いています。
岡西他に印象的な経験はございますか。井上人との「縁」の力は、組織を動かす上でも身に染みて感じました。 ANA 社長就任時、業績はコロナ禍でまさに修羅場でした。しかし、経営再建を進める中、懸命に会社を支えてくれた社員とは、同じ船に乗り運命を共にする強い絆で結ばれました。対話を重ね、時にはぶつかり合いながらも『 ANAを復活させたい』という思いを一つに挑み続け、 4 年後には過去最高の業績を達成できたのです。強い縁があったからこそ、組織を大きく動かせたと確信しています。岡西最後に、経済同友会では中国委員会委員長を務められていますが、今後の展望についてお聞かせください。井上つい最近、岩屋前外務大臣が会長を務める日本国際貿易促進協会の一員として、中国を訪れてきました。王毅外相に加えて何立峰副首相ともお会いすることができ、実りある訪問だったと思っています。人とのご縁は、国と国との関係をも動かす力になります。 ANAの第 2 代社長・岡崎嘉平太氏は、日中関係の礎を築いた人物の一人です。政治的・外交的な試練の中にあっても101 回の訪中を重ね、周恩来総理との深い信頼関係を築き、国交正常化を結実させました。現在、日中関係は厳しい環境にありますが、私は中国委員会共同委員長として、この大先輩の志を継ぎ、対話と交流を推し進めていきたいと考えています。「一衣帯水」の隣国同士として、互いを敬い、共に平和と繁栄を分かち合える揺るぎない関係を築いていく。覚悟を持って自ら動き、国と国をつなぐ真の「縁」の力を未来へ紡いでいきたいと思います。
書家岡西佑奈
1985 年3月生まれ。 23 歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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特集
共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ
共助成長社会で取り組むこれから【後編】
共助資本主義の実現委員会(委員長:髙島宏平オイシックス代表取締役社長、井上ゆかりエマージア代表取締役社長、大西健丞ピースウィンズ・ジャパン代表理事、程近智ベイヒルズ代表取締役)は 7 月1日、インパクトスタートアップ協会および新公益連盟と共催で「共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ」を開催した。約 400 人が参加し、これまでの具体的な取り組みを共有した。前号前編のパネルディスカッションに続き、本号では七つのテーマ別に行ったブレイクアウトセッションを紹介する。(所属・役職は開催時)■七つのテーマ B 「次なる成長戦略」―インパクト新規事業の共創― A 「経営者が出会うべき次世代リーダー」―インパクトピッチ― D セクター/領域を超えて価値を発揮できるリーダーの育成
E
レジリエントな街づくりと防災・復興の可能性 C 「食と農の構造変革」―経済安全保障と地方創生の交差点― F セクター連携で考える今後の教育・雇用のあり方 G 「社会的価値志向経営のモデル構築」―社会価値と企業価値をつなぐ日米比較研究―来賓挨拶(要旨)
ヤング・プレースレス議員連盟を発足若者支援は日本の未来への投資政府・企業・ NPO ・地域社会が連携して支援を
加藤勝信
衆議院議員ヤング・プレースレス議員連盟会長自由民主党政治制度改革本部長
昨年1月、サンカクシャからいただいた若者支援の議員連盟設立の提言を契機に、本年3月に超党派のヤング・プレースレス議連を発足させた。その後、5月には同議連にて具体的な政策に落とし込んだ提言を取りまとめた。高齢者や子どもへの支援制度は整備が進む一方、 10 代後半から
20 代前半の若者への支援は依然として十分ではない。若者は自立できるとの先入観があるが、家族を頼ることができない若者は約7割に上り、就労や就学との接点を失い、孤立するケースも少なくない。困難を抱える若者は多いにもかかわらず、その実態が見えにくいことが大きな課題である。同議連の提言では、若者政策を統括する司令塔の設置、若者ピア型総合支援拠点の全国展開、困難を乗り越えた当事者が支援に携わるピア支援モデルの構築、一元的なプッシュ型支援、住まいの確保支援を柱として掲げた。これらの課題は政府だけで解決できるものではなく、企業・NPO ・地域社会が連携して取り組む必要がある。そのため、寄付税制や地方創生応援税制の活用に加え、企業の社会的活動をコーポレートガバナンス・コードで積極的に評価する仕組みも推進する。若者支援はコストではなく、日本の未来への投資であり、次の時代を切り開くための基盤である。
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ブレイクアウトセッション(要旨)テーマ別にルームに分かれ、ピッチや対話を行った。 A 「経営者が出会うべき次世代リーダー」―インパクトピッチ―ルームオーナー米良はるか
インパクトスタートアップ協会代表理事 READYFOR 代表取締役 CEO
フィードバックメンター池田潤一郎
副代表幹事中国委員会委員長商船三井特別顧問
藤沢卓己
三井住友信託銀行取締役専務執行役員
井上慎一
中国委員会委員長 ANA ホールディングス特別顧問
山本清博
アズビル取締役代表執行役社長
社会課題に挑む次世代リーダーと大企業の共創を創出
荷堂真紀
コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス代表取締役副社長■社会課題の解決に挑む次世代リーダーが自社のビジョンや事業内容、今後の協業ニーズを発信し、大企業との共創機会を創出することを目的とする。社会課題を起点とした多様なインパクトスタートアップ・ NPO が登壇し、事業を通じた社会実装の現在地や今後の展望を共有した。
多岐にわたる分野での事業モデル■新たなモビリティとしての「空飛ぶクルマ」、難民人材の就労、デジタルものづくりなど新たな教育モデル、高齢者・若者・障害がある人が支え合う地域コミュニティ、アフリカでの中古車マイクロファイナンス、サステナビリティ ERP など多岐にわたる分野で「社会課題を事業として解決する」という共通の視点から、具体的な事業モデルや成果が紹介された。
社会実装とスケールへの示唆■フィードバックメンターからは、社会的意義に加え、事業としてスケールするための視点や大企業との協業可能性について多くのコメントが寄せられた。安全性や社会受容性の向上、地域との連携、受け入れ体制の整備、情報発信の強化など社会実装を加速させるための具体的な示唆が共有された。
今後の共創に向けて■セッション全体を通じて、インパクトスタートアップと大企業が連携することで、社会課題解決と事業成長の両立を実現する可能性があらためて示された。登壇者からは事業連携や実証フィールド、資金・人材面での協力を求める声が挙がり、メンターからも今後の対話や連携に前向きなコメントが多く寄せられた。 B 「次なる成長戦略」―インパクト新規事業の共創―ルームオーナー橋本舜
ベースフード代表取締役
「共助」による社会課題解決型事業の創出と大企業との連携事例を共有する■一定規模の事業実績を持つ企業や NPO が集まり、「共助」による社会課題解決型事業の創出や大企業との連携事例を共有した。フード・金融・賃貸・建設・人材育成/研修・医療機関 BPO ・再エネ・投資支援・コスメなどさまざまな企業や NPO が集まり、「共創」事例を共有した。
セクターを超えた「共創」■企業・スタートアップ・ NPO ・行政などがそれぞれの強みやリソース(余剰資産、人脈、ノウハウ)を持ち寄り、新たな掛け算でインパクトを生み出すことを目指す。
持続可能な社会課題解決■ NPO 的な領域の課題であってもボランティアや一過性の支援にとどめず、「ビジネス(事業)」として継続・自立できる仕組みを構築する。
具体的な取り組みへのコミット■単なる理念の共有ではなく、ファンドの組成、 BPO の活用、地域連携プログラムなど、明日からの事業につながる具体的なアクションやモデルを模索する。■「社会課題に対してビジネスの手法を持ち込んではいけない」という認識が根強い場合もある。その認識を変えるためにも、大企業・インパクトスタートアップ・ NPO の間でノウハウを共有していくことが重要だ。■規模の小さい組織では収益性の面で事業継続が難しくなることもある。そのため、制度面での支援や底上げも必要だ。こうした部分については、経済同友会のような場を活用しながら連携して解決していくことが有効である。
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特集共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ【後編】
C
「食と農の構造変革」―経済安全保障と地方創生の交差点―ルームオーナー坪井俊輔
サグリ代表取締役 CEO
D
ルームオーナー岡本祥公子
セクター・領域を超えて価値を発揮できるリーダーの育成
齋藤立伏見崇宏
農地/アグリテック・フードテック/食の流通/地方創生■「農地」「アグリテック・フードテック」「食の流通」「地方創生」の4テーマでグループディスカッションを実施した。共助の精神で立場を超えた協業機会と提言の創出を目的に議論した。
農地に関する規制や制度の課題■農地グループでは日本での農地売買の難しさが論点になった。農地の売買や集約に制約があり、農業スタートアップが事業を拡大しようとしても必要な農地を確保しにくいことから、農地に関する規制や制度の課題を国に提言していく必要がある。スタートアップ側では提言をまとめて行政に届ける取り組みを進めている。
1 次産業の見える化■衛星データ×AI を活用して農地を見える化し、農地集約に向けて引き受け手とのマッチングにつなげる。■画像解析による畜産業の見える化を通じて、1次産業を「経営できる・投資できる」産業へと転換することについても議論した。
日本の食の再興■食料自給率低下や気候変動に対してテクノロジーなどを活用し、日本の食を再興する。
分野横断的な連携の必要性■耕作放棄地の拡大、担い手の高齢化、集約化の遅れなどの課題も議論した。金融の立場から資金・マッチング支援の可能性が示された。■フードロス対策や中小規模生産者の持続性支援、蚕由来の栄養素材での生活習慣病予防の研究・製品化などの分野横断的な発表もあった。
新公益連盟理事サービスグラント共同代表
企業×大学×ソーシャル枠組みを超えた価値共創■事業価値と社会価値の両立に向け、企業・大学・ソーシャルセクターがセクターの枠を超えて混じり合い、価値を共創する重要性が示された。次世代リーダー育成に向け、企業の枠を超えた異なる価値観や評価軸に触れる機会として、ソーシャルイノベーションやソーシャルセクターとの連携が有効であるとの意見があった。
「プロボノ」や人材育成の機会に■企業の従業員が社会課題に触れる機会を単なるボランティアにとどめず、自身の仕事の経験やスキルを活かす「プロボノ」や人材育成の一環として位置付けることで、当事者意識の醸成や人としての成長につながるとの議論があった。
社会との共創を促す多様なアプローチ■社会的価値や経済効果の可視化に向け、学生が社会との接点を増やし即戦力として活躍できる教育プログラムの必要性に加え、世代を超えた交流や複数企業が参画する共同プロジェクトといった多様な共創アプローチが提案された。
大学連合とソーシャルウェンズデーの連携と関西への展開■大学連合とソーシャルウェンズデーが連携し、新たなプログラムの構築を検討する。ソーシャルウェンズデーに参画している企業と相談しながら、具体的な内容を設計していく。また、大学連合の関西展開に注力する。合わせて、ソーシャルウェンズデーも関西で展開する。協力企業や NPO を募り、地域を越えた連携を広げていく。
共助資本主義の実現委員会副委員長シグマクシス執行役員マネージングディレクター
ICHI COMMONS CEO Founder
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E
レジリエントな街づくりと防災・復興の可能性 F セクター連携で考える今後の教育・雇用のあり方
ルームオーナー藤沢烈今村久美
大西健丞
ルームオーナー小沼大地程近智
荒井佑介
RCF 代表理事能登官民連携復興センターセンター長
新公益連盟理事カタリバ代表理事
副代表幹事共助資本主義の実現委員会委員長ピースウィンズ・ジャパン代表理事
新公益連盟共同代表理事クロスフィールズ共同創業者・代表理事
共助資本主義の実現委員会委員長ベイヒルズ代表取締役
サンカクシャ代表理事
フェーズフリーな事前防災投資を■事前防災の観点から、災害時だけでなく、平時のインバウンド対応や環境対応にも活用できる「フェーズフリー(デュアルユース)」な設備・人材投資を、セクターを超えて進めることが重要である。休眠預金の活用や、能登空港の地政学的利点を活かした防災ハブ化(サンダーバード基地化)の構想が提案された。■物流分野においても、フェーズフリーの実装が求められる。ドローンの日常的な運行実績(フェーズフリー化)による緊急輸送体制の確立や、発災時を想定した避難所のレイアウト設計、関係企業や NPOとの平時からの人的ネットワーク構築が必要である。アートや教育イノベーションを復興の力に■人口減少が進む奥能登の復興に向け、アートを通じた地域の再発見や、公立高校を「外から留学したくなるイノベーションの場」へ変革する教育プログラムなどが提唱された。企業には管理職から若手まで多様な人材が能登の現場プロジェクトに参画することや、研修・人材育成プログラムといったさまざまなリソースでかかわることが期待される。大企業自身が気付いていない資産を掘り起こす■企業の「眠れる資産」や技術は素晴らしく、新しい技術と組み合わせてエコシステムを実現し、災害対応の仕組みを生み出す可能性がある。
若者の孤立と本質的な就労支援■不登校や貧困、虐待などを背景に孤立し、生活困窮の状況にある若者は社会や就労との接点を持ちづらい。履歴書の書き方や面接練習といった表面的な就労支援だけでは定着が難しい。企業の実際の業務に若者がかかわり、働く体験を通じて人間関係や自信を回復させるプロセスが不可欠である。マルチセクター連携による社会システムの構築■単なる寄付やボランティアといった「外側からの支援」にとどまらず、企業・NPO・行政・アカデミアがそれぞれの強みを持ち寄る必要がある。企業側も学ぶという双方向のシナジーを生み出し、社会システム・エコシステムを構築することが日本の教育・雇用における重要な課題として共有された。「 18 歳の壁」と持続的な安心の場■経済的困窮だけでなく、複合的な困難を抱える子どもたちにとって、児童福祉の枠組みから外れる「 18 歳の壁」は深刻である。高校卒業後、就職先でつまずいてしまうと、安心できる居場所が社会からなくなり、それが孤立を深める要因となっているが、 NPO 単体の支援では解決が難しく、企業の理解と若者を社会に接続する仕組みを共創することが急務である。
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特集共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ【後編】
全体共有
ブレイクアウトセッションでの議論について、各グループからの報告と共有が行われた。 G 「社会的価値志向経営のモデル構築」―社会価値と企業価値をつなぐ日米比較研究―ルームオーナー伊藤健
ソーシャルバリュージャパン代表理事
社会的価値と事業的価値を実現する経営モデルの提示■「社会的価値志向経営モデル」の中間報告として、企業が本業の成長の中で社会的価値と事業的価値を、シナジーを持った形で実現する経営モデルを提示した。社会性を強いリーダー個人に依存させるのではなく、「意思・理念」「ガバナンス」「戦略」「測定・開示」の4領域の相互作用として仕組み化する枠組みと、ルールメイキング・内発的動機・時間軸などの論点、七つのモデル類型・リコーのケースが共有された。
JT とコングラントの実践事例■実践事例として、日本たばこ産業は社会的価値の可視化・非財務価値の「バリュエーション」化を中期的ゴールに据えて、リーダーシップ依存の脱却(民主化)と情報開示規制を追い風とした段階的なデータ収集・「 100 本ノック」の取り組みを紹介した。また、コングラントは寄付・資金循環の社会基盤づくりや企業と小規模団体をつなぐ中間支援機能の必要性を報告した。両者とも旧来型の CSR を超え、社会性を本業や企業価値につなげていくという課題意識を共有した。
グループ討議での主な論点■グループ討議では、プロダクトと社会貢献が直結する事業は全体では限定的という指摘や、本業に社会貢献をどう接続し、ロジックとデザインを設計するかという論点、人的資本投資として捉え直す視点、本研究モデルを社会に適用した先のインパクト(投資の呼び込み・ IR ・連携)などについて議論された。参加者の多くが同じ課題認識を共有し、自分ごととして取り組む意思が確認された。■社会的価値と事業的価値を結び付ける仕組みを個別事例ではなく、より普遍的な経営モデルとして形成できるかが今後の論点である。
閉会挨拶
共助の取り組みは具体的解決フェーズに
約半日の議論を通して多くの刺激と学びがあった。特に、「見つめ合うより同じ方向を向く」という言葉は共助の取り組みにとって重要なメッセージである。
大学、企業、インパクトスタートアップ、政府、 NPO など立場はそれぞれ異なる。貧困や教育など取り組む社会課題も多様である。しかし重要なのは、それぞれが個別に取り組むだけでなく、横のつながりによってどれだけ課題を解決できたかである。
山口明夫
経済同友会代表幹事日本アイ・ビー・エム代表取締役社長
議論することは重要だが、共助の取り組みは実際に課題を解決していくフェーズに入っている。今後は経済同友会としても、企業経営者としても、各セクターの皆さんと連携しながら具体的な解決に向けて取り組んでいく。
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>> 委員長メッセージ
地方自治を持続可能にする新たな基盤「連携・分業型」の自治体間連携を地方自治・地方創生の新たな標準に
地域共創委員会(2025 年度)委員長/地下誠二・野田由美子
(インタビューは 9 月 18 日に実施)
地域共創委員会では 2024 年度の報告書で訴えた地方創生の加速のための「自治体連携」の重要性について、今回さらに深掘りした提言を発表した。地方の危機に対し、連携をベースとした新たな姿をいかに具現化していくべきか。地下誠二、野田由美子両委員長が語った。
自治体が直面する課題の克服には連携と分業が不可欠
地下
地域共創委員会では 2024 年度の報告書で、地方創生の加速のためには地方自治体間の連携を推進すべきと主張しました。その後も委員会では自治体などと議論を重ね、連携を阻む課題やあるべき具体的な連携像、連携を促進する制度設計など、さらに深掘りする形で今回の提言をまとめました。
自治体が現在直面する課題として、提言では「人材・担い手の不足」「財政制約と地方交付税制度の課題」「行政サービスの効率低下」の3点を挙げています。
まず担い手について、平成期の行政改革以降、地方公務員の実数そのものが減少しています。採用に関しても、特に技術系職員を中心に大変苦労されていると聞いています。
また、地方財政の厳しい現状は、高度経済成長期に設計された地方交付税制度が現状に合わなくなっていることも背景として挙げられます。人口や面積を主な基準とした「基準財政需要額」をベースに、各自治体の交付額の多寡が決められます。結果、人口減少が進む局面では交付額が減少し、また
自治体が効率化努力を行っても、財政的には報われにくい仕組みとなっています。さらに、サービスの効率低下は「需要密度の低下」に大きく起因しています。合併によって行政区域の面積は広くなった半面、少子化や社会減によって人口が減少し、広大な地域に住民が散在する状況が生まれました。これが効率的な行政サービスの提供を難しくしています。これらの課題認識の根底にあるのは、これまで自治体が当然としてきた「単独・自前型」、つまり全てのサービスを一自治体だけで賄うという考え方がもはや成り立たなくなったのではないか、という強い危機感です。野田 24 年度の報告書では、東京一極集中の是正が進まない厳しい現実に鑑み、地域の持続可能性を確立する鍵として4点を掲げました。第一に官民連携の推進、第二にデジタル化の推進、第三に人材の育成、第四に地域スタートアップの創出です。しかし、個々の基礎自治体が独力でこれらを実行するのは困難です。特に、人口 30 万人以下の自治体がこれら4要素を推進し、持続可能な市民サービスを提供するには、自治体間の
広域連携が不可欠だと報告書で訴えました。今回の提言はその実現に向けた具体策を深掘りしたものです。
連携をまず前提とするというパラダイムシフトを図る
野田これまで長年にわたり続いてきた成長時代の「単独・自前型」モデルを変えることには、心理的な抵抗感もあるかもしれません。しかし、人口減少により自治体を支える担い手も減り、税収も限られる中で、従来のやり方を踏襲し続けることは物理的にも財政的にも不可能です。私たちはこの事実を直視し、「単独・自前型」から「連携・分業型」へと、地方自治のあり方そのものを抜本的に転換する時期に来ていると認識しています。
これまでも、例えば広域連合など行政連携の仕組み自体は存在しました。しかし、あくまで補助的・追加的なものとして運用されてきたものです。「基本は単独自治体がフルセットでサービスを提供し、必要に応じて連携する」という、例外的な位置付けだったといえます。
この発想を逆転させ、「連携をまず前提とする」というパラダイムシフトを図っていく。県や市町村が対等な
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CLOSE-UP 提言
地下誠二委員長日本政策投資銀行顧問
1963 年岡山県生まれ。 86 年東京大学法学部卒業後、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。 2011 年執行役員(特命担当)兼経営企画部担当部長兼特命チーム部長、 15 年常務執行役員、 18 年取締役常務執行役員、 20 年代表取締役副社長、 22 年代表取締役社長を経て、 26 年より現職。 2015 年 10 月経済同友会入会。 17 年度より幹事。 18 年度より地方創生(現・地域共創)委員会委員長。
野田由美子委員長ヴェオリア・ジャパン取締役会長
1960 年東京都生まれ。 82 年東京大学文学部卒業、 90 年ハーバードビジネススクール。 82 年バンク・オブ・アメリカ東京支店入社。 90 年日本長期信用銀行入行。 99 年プライスウォーターハウスクーパース入社、 2000 年パートナー就任、 PPP ・民営化部門統括。 07 年横浜市副市長就任。 17 年ヴェオリア・ジャパン取締役社長就任、 20 年より現職。 2005 年 1 月経済同友会入会。 12 年度より幹事。 23 年度より地域共創委員会委員長。
パートナーとして、中長期的な視点から住民にとって最善の行政サービスのあり方を共に考え抜き、自治体間や官民で役割分担を図っていく。そうしたモデルを構築していくことが求められています。
適正な連携モデルの提示地方交付税制度の見直し
地下
連携・分業型への転換を具体化するために、提言では三つの施策を掲げました。第一の施策は「行政サービスごとの適正な連携モデルの提示」、第二は「地方交付税制度の見直し」、第三は「公務・公共サービス法人の導入」です。野田
行政サービスと一口に言っても、その性格や機能によって連携のあり方やかかわるべきプレーヤーは大きく異なります。例えば水道事業であれば、河川の流域単位で一体的に連携し
て処理した方が効果的ですし、ごみ処理であれば、最新の焼却施設を持つ自治体を中心に隣接するエリアで連携する形が考えられます。例えば、神奈川県鎌倉市では、可燃ごみの処理を逗子市などに委託することで、老朽化した市内焼却炉を停止しています。今回の提言ではどの分野のサービスをどの程度の範囲で連携するのが望ましいか、学術的な目安や具体的な好事例を挙げています。人口規模や地理的特性などを組み合わせ、より詳細な適正モデルを国や自治体が考える際の参考としていただければと思います。地下現行の地方交付税制度は70 年以上にわたり地方財政の中核を担ってきたものであり、抜本的な見直しには中長期的な視点に立った丁寧な議論を重ねる必要があります。他方で、短期的な改革が可能な部
分もあります。例えば普通交付税の算定方式について、単一自治体ごとの基準財政需要額を基準とするのではなく、複数自治体が連携して取り組んだ場合の必要額を基準にして、単位費用を設定することが考えられます。いわゆる「トップランナー方式」の応用として、複数自治体による共同設置・共同処理を基準に単位費用を設定し、単独実施の場合は相対的に少額となる配分とすることで連携の促進を図れます。また、広域連合や一部事務組合などすでに存在する連携主体に直接、交付税を交付することも考えられます。これら既存の枠組みには現状不完全な部分もありますが、直接財源が配分されることで、予算・資産・調達・運営・成果管理が事業単位で一元化できるようになり、連携事業の運営改善が期待されます。
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連携の実装を担う半官半民の外部組織の創設
野田
第三の「公務・公共サービス法人の導入」は、地方公務員が不足する中で、自治体の外部に連携の企画・立案・実装を担う半官半民の組織体を創設しようというものです。 24 年度の報告書でも提案していましたが、その後、地域との意見交換を重ねる中で、担い手不足が想像以上に深刻であることが判明し、今回の提言ではより詳細な制度の骨格を提示しました。地下今回の提言が主要なターゲットとしているのは概ね人口 30 万人以下の基礎自治体です。これらの自治体はより深刻な人材不足に直面しています。特に技術系職員の採用が長年にわたり困難となっており、知識や技術を有する職員がほぼいない自治体も珍しくありません。その結果、例えば公共工事の発注においても、国土交通省の標準仕様でしか行えず単独では従来型の発注しか行えない、といった事態が生じています。やはり、専門人材が「集団」として存在し、それを複数の自治体で共同活用していくという発想が不可欠となります。
これまでも民間活力を導入する PFI (Private Finance Initiative)やコンセッション方式などが一部で活用されてきました。しかし、これらは契約期間が終了すれば事業者が撤退する可能性もあり、持続性という面で懸念が残ります。また、民間企業の参画に「利益だけを求めているのでは」と疑念を抱く住民も、残念ながら一定数存在するのが現実です。
そこで、重要となるのが制度的な裏付けです。地方自治法に「公務・公共サービス法人」といった存在を位置付けて、規模の経済を発揮することで、個別の地方自治体では確保しにくい専門人材とノウハウを集約する。さらに、利益相反にならない範囲で複数自治体から執行を受託する機能を付与して、例えば窓口業務やデジタル化関連
業務、施設管理業務などの執行を担う。そうした担い手となる「人材プール」を法的に位置付けることを提言しています。
こうした施策を円滑に進めるための「基盤づくり」として、提言では三つの要素を提示しました。「地域の未来予測」の義務付け、人材健全化指標の導入、ローカル・ルールの見直しと業務標準化です。
「地域の未来予測」を義務付け人材健全化指標の導入
地下
まず「地域の未来予測」ですが、 15 年先から 30 年先までの長期的な視点で行政需要や公共施設、経営資源の変化に関する客観的な予測データを整理するというものです。これを行うと、地域にとっての「不都合な真実」も明らかになります。例えば、「今は介護施設が足りないが、 30 年後には高齢人口も減少し、施設を造っても余ってしまう」といったようなことです。連携に向けた住民のコンセンサスを形成するためにも、少なくとも連携中枢都市圏などの自治体には作成を義務付け、客観データを整えるべきだと考えます。野田基盤づくりの中で私が特に強調したいのが、「地域の未来予測」における「住民参画」の重要性です。すでに将来予測や長期計画を策定している自治体も多数ありますが、外部のコンサルや有識者に任せるケースも散見され、結果としてどの自治体も中身は似通ったものになりがちです。
地方自治の基本は、住民が地域の課題を自分ごととして捉えることです。 30 年後、 50 年後の自分たちの子どもや孫の時代にこの町がどうなっていくのか。住民自身が把握し、議論することが不可欠です。客観的なデータを出発点に、住民参画のプロセスを通じて一人ひとりが理解を深め、目指すべき未来像や必要な連携のあり方を描き出していく。この地域の将来を考える。このプロセス無しに、持続可能な地域づくりは実現しないと考えます。
地下
二つ目の人材健全化指標の導入は、地方公務などの人材不足が一定の基準を超え、行政サービスの持続が困難になりつつある領域を可視化するものです。危機が顕在化した場合には、広域連携や PFI などの活用、先ほどの公務・公共サービス法人への移管などを比較・検討するマーケット・テストを義務付けるといった仕組みも必要です。
三つ目に挙げたローカル・ルールの存在も、実務面で連携を阻む大きな壁となっています。例えば、ごみの分別にしても自治体ごとにばらばらですし、引っ越しの際の住民票の手続きも、内容は同じなのに自治体ごとに書式が異なっています。デジタル庁が進めているシステムの共同利用などデジタル化で解決できる部分もありますが、まずは業務フローやルールの標準化を進め、共同処理を可能にする基盤を整える必要があります。
自治体の危機は企業経営に負の影響地方の衰亡は国力低下を招く
野田企業経営者にとって、自治体の課題や将来像はやや遠いテーマと感じる方もおられるかもしれません。しかし、地域の生活基盤であり産業基盤である自治体が機能不全に陥れば、企業に与える影響は計り知れません。官民連携が不可欠な地方こそ、新たなビジネスフィールドとして捉え、ぜひ関心を持って議論に参加していただきたいと考えています。地下多くの企業人の目線は東京に向きがちですが、地方で進行する衰亡感はさらに大きな地域間格差、ひいては国力の低下を招きます。相対的な国際競争力低下につながる事態に対し、国全体として持続可能な形での打開策を提示することが重要でしょう。
くしくも、国でも地方制度調査会を開催するタイミングでの提言活動となりました。問題意識には多くの共通点も見られます。よりブラッシュアップさせていくことで、国の政策の突破口につながるのではと期待しています。
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CLOSE-UP 提言
提言概要(8 月 17 日発表)
人口減少時代の地方自治
~単独・自前型から連携・分業型への転換~
本会では、 2024 年 11 月に公表した報告書『地方創生の加速に向けて~近隣地連携・遠隔地連携のさらなる推進を~』において、人口減少下で地域の持続可能性を確保するためには、自治体間連携が必須である旨を指摘した。その後、引き続き地域共創委員会を設置し、地方自治体などとの意見交換を重ねる中で、自治体間連携の必要性は広く認識されているものの、具体的な連携像の共有や連携を後押しする財政制度、企画・実装を担う人材の不足といった課題を確認した。本提言はこれら課題に対して、自治体間連携を実装段階へと進めるための制度改革を示すものである。人口減少時代の地方自治に求められるのは各自治体が全ての機能を抱え続けることではな
く、住民に必要なサービスを地域全体として安定的かつ効率的に提供することであるとの考えの下、「単独・自前型」からサービスごとに最適な主体・規模・手法を選択する「連携・分業型」へと地方自治のあり方を転換することを提言している。そのための第一歩として、行政サービスごとの連携モデルとコストの可視化、地方交付税制度の改革、自治体間連携や官民連携を企画・実装する半官半民の「公務・公共サービス法人」制度の創設を求めた。また「連携・分業型」への転換の基盤として、「地域の未来予測」の策定の義務化、人材健全化指標の導入、ローカル・ルールの見直しと業務標準化を進めることを求めた。■基本的な考え方
「単独・自前型」から「連携・分業型」へ
住民生活に必要な行政サービスを、自治体の境を超えた地域全体で安定的・効率的に提供し続ける
各自治体が同じ機能をそれぞれ実施▶事情に応じて、提供主体と提供方式を柔軟に選択全てのサービスを同じ枠組みで行う▶サービスごとに最も適した連携・組み合わせを検討各自治体の職員が自ら事業を実施する▶最適な連携先を見極めるのも職員の重要な役割に■「連携・分業型」に向けた三つの施策
行政サービスごとの適正な連携モデルの提示•人口規模と地理的特性などを組み合わせた検討•コストを比較可能な形で提示して単独実施と連携との比較ができるように
地方交付税制度の見直し•連携して取り組んだ場合の必要額を基準に単位費用を設定(トップランナー方式)•広域連合や一部事務組合などに直接交付
公務・公共サービス法人の導入•地方公務員が不足する中、自治体の外に連携の企画・立案・実装を担う組織を•地方自治法上に法的位置付けを明確化など■施策を補完する自治と連携の基盤づくり
「地域の未来予測」の義務付け•地方自治の基礎として、住民参加の下で策定し、政策決定の基礎に
人材健全化指標の導入•人材不足を見える化して、悪化時には国・都道府県による是正措置を
ローカル・ルールの見直し•連携を阻むローカル・ルールを見直し、業務標準化を推進
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経済同友会つながる
▲▲▲ RELAY TALK #321
紹介者植村幸祐
双日代表取締役社長 CEO
西恵一郎
富士通執行役員常務 CSO
「誰と挑戦するか」を人生の羅針盤に
人口約 2 万人の長崎県・壱岐。四方を海に囲まれた小さな島で育った私は、「もっと広い世界で自分の可能性を試したい」という想いを抱いていました。大学進学を機に上京し、同時期に海外を訪れた経験を通じて、その想いは「世界を舞台に挑戦したい」という明確な目標へと変わりました。その第一歩として選んだのが、三菱商事です。三菱商事では、ビジネスの厳しさと同時に、ステークホルダーにとっての最適解を考える視点を学びました。世界レベルで考え、大きく物事を動かしていくダイナミズムに触れた経験は、今も私の思考の土台になっています。多くの挑戦や失敗を重ねながらも、先輩やお客様に支えられ、人の力によって乗り越え、成長できることを実感しました。その後、自ら事業を創り組織を成長させる経験を求め、当時社員 80 名だったグロービスに参画しました。多様な経験を持つメンバーと顧客の組織変革に伴走しながら事業を成長させる日々は刺激に満ちていました。中でも上海での5 年間は、私の価値観を大きく変えた経験です。言語も文化も異なる環境でゼロから現地法人の立ち上げを担う中で、「何をするか」以上に「誰とするか」が成果や充実感を左右することを強く実感しました。
20 年を経てグロービスも1,000 名を超える規模になり、私自身も多くの企業を支援する側ではなく、当事者として実行しようと考えるようになりました。そんな時に出会ったのが、富士通の時田社長です。前提にとらわれず、大胆に施策を打ち出して変革を実行する姿に惹かれ、「この人となら世界で勝負する企業をつくれるかもしれない」と感じ、富士通への挑戦を決意しました。私の志は、「世界で通用する日本発のサービス企業をつくる」ことです。振り返れば、私の人生を前に進めてくれたのは、いつも人との出会いでした。今年は中長期経営ビジョン2035をリリースし、これから10 年かけて社会が向き合う課題を、 AIそし
てテクノロジーで解決する企業へと変革するアジェンダを設定したタイミングです。これからも「誰と挑戦するか」を人生の羅針盤として、富士通、そして日本企業が世界でより大きな価値を生み出す未来に貢献していきたいと考えています。
▲▲次回リレートーク
寺畠正道日本たばこ産業取締役副会長
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S ・ E ・ M ・ I ・ N ・ A ・ R 第 1376 回(2026 年度第 3 回) 9 月 8 日
会員セミナー
経済安全保障と企業経営
近年、経済安全保障の重要性が高まり、政府も関連政策を積極的に推進している。企業はどのようにこの問題に向き合えばいいのか。経済産業省在籍時から経済安全保障に取り組み、現在は高市内閣の官房参与として政策提言を行っている細川昌彦氏が語った。講師:細川昌彦氏
内閣官房参与(経済安全保障・産業政策担当)
「パワー・アジア」は産油国とアジアの国々をつなぐ結節点になる第 2 次オイルショックをきっかけに、日本は原油の中東依存度を下げ、 1987 年度には67.9%まで低下した。しかし、その後は再び上昇した。企業が経済合理性を優先して安く使いやすい原油を選んだ結果、地政学的リスクが高まったためだ。それが顕在化したのが今回のホルムズ海峡危機である。資源エネルギー庁では、リスクをコストとして可視化し、非ホルムズ化も含めた制度設計をしている。ホルムズ海峡危機時のアジア各国の石油備蓄は十分とは言えず、ベトナム、フィリピンも、日本に支援を求めてきた。日本は4 月 15 日に「パワー・アジア」を提唱し、 100 億ドル規模の金融支援に踏み切った。困っているときにどう対応するかで、アジアの国々が今後日本と一緒に歩むかどうかが決まる。こうした取り組みは、さらに強化・発展させるべきだろう。同時に、サウジやUAEなどの産油国にとってもアジア市場の開拓は重要だ。日本がアジア諸国を支援することで、産油国とアジアの国々をつなぐ結節点になることができる。米国の経済安全保障にとって日本が「不可欠」な存在になれるか
80 兆円の戦略的対米投資イニシア
ティブに対して、「日本は米国のATM になるのか」との批判もあるが、そうではない。対米投資というと日本企業による米国投資だけを思い浮かべる人が多い。だが、投資する主体は米企業や米国に投資する第三国企業も含まれる。そうした企業に日本企業が装置・材料を供給し、生産された製品を購入することで、日本の経済安全保障の強化につながる。日本の経済安全保障にプラスになると判断したら、 JBICによる出融資も可能である。すでに案件を模索している企業もある。実利優先のトランプ政権は、米国の経済安全保障にどれだけ貢献しているかを評価軸にする。昨年 12 月に米国は国家安全保障戦略を策定しているが、これは重要サプライチェーンと資源へのアクセス確保、再工業化、防衛産業の再生を目指したものだ。今後、米国の経済安全保障にとって日本が「不可欠」な存在になれるかどうかが鍵になる。そのためのツールとして、対米投資イニシアティブを戦略的に活用すべきだ。企業はこれにいかに呼応してビジネスチャンスとするのか、重要な局面に来ていると私は思う。相手国に依存させ「経済の武器化」を進める中国。経営者はリスクを理解中国は重要産業のサプライチェーンを上流から下流まで国内で自己完結させることを戦略としている。不足する
技術を取り込みながら国産化を進める一方、国際的には他国の中国への依存度を高め、それを影響力として活用する「経済の武器化」を狙っている。例えばレアアースは採掘の約 6 割、精錬の約 9 割のシェアを握っており、こうした状況をつくって相手を依存させている。レアアースから造られる高性能磁石は、電気自動車や風力発電、産業用工作機械などに使われる。 2010 年代に尖閣列島の問題でレアアースが不足し、日本の磁石メーカーは苦しんだ。中国は「中国に工場を造ればレアアースはたっぷりと供給する」と誘った。日本の磁石メーカー数社が中国に進出した結果、技術流出も起こった。中国による対日輸出管理が強化され、「管理リスト」と「懸念リスト」に各 20 社が追加された。単に外交的な駆け引きというだけでなく、企業の持つ顧客情報、エンドユーザーの情報、あるいは技術情報を得るのも狙いだ。日本政府は24 年 12 月「技術管理対話スキーム」を導入し、官民対話を通じて重要技術の流出防止に取り組む仕組みを整えた。合わせて「技術流出対策ガイダンス」を策定し、企業による自主的な技術管理の強化を促している。また26 年には「経済安保経営ガイドライン」を策定、「コーポレートガバナンス・コード」を改訂しリスク管理体制を強めた。こうした制度を正しく理解し、技術管理など企業のリスク管理を一つひとつ丹念に行うことが必要である。
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DOYUKAI REPORT
9月 10 日開催
産業調査研究会 14 グループ合同懇談会を開催
産業調査研究会(以下、産研)14グループは9月 10 日、東京・帝国ホテルにて懇談会を開催した。当日は山口代表幹事も出席した。多様な立場の会員が和やかな雰囲気の中で活発に意見や情報を交換し、相互啓発を図るとともに、新たな出会いを通じて会員同士の交流と親睦を一層深める有意義なひとときとなった。
会員同士の情報交換や交流が活発に行われ、親睦を深めた
親しい会員同士の会話が盛り上がる中、内田士郎産研代表世話人は冒頭の開会挨拶で、経営者の学び・育成、ネットワーキングの活動の一つである産研について、「産研は私にとって経済同友会活動の原点だった。産研を本会活動の『ホームルーム』として、委員会活動や対外発信など、さまざまな活動の起点にしてほしい」と紹介し、普段接点のない会員との活発な交流に期待を示した。続いて鈴木純産研担当副代表幹事は、「共助成長社会の実現に向けて各委員会が活発に活動しており、ぜひ委員会活動にも積極的に参加してほしい。また、企業経営者だけでなく、スタートアップ、 NPO 、アカデミアなど多様な立場の会員が直接語り合えることが経済同友会の魅力であり、普段接する機会のない人と交流することで、自分の世界を
さらに広げることができる」と述べ、産研を新たな出会いや知見を得る場として積極的に活用し、会員同士の交流を一層深めてほしいと呼び掛けた。山口代表幹事は乾杯の挨拶で、「『産研が楽しい』というところからネットワークがつながっていく。それが経済同友会の発展にも、日本社会への貢献にもつながる」と、会員同士の交流が新たな内田士郎産研代表世話人鈴木純産研担当副代表幹事
活動を生み出すことへの期待を示した。乾杯後は各所で会員同士の会話が弾み、所属グループを越えた交流が続いた。中締めでは湯川智子産研代表世話人が、「経済同友会に入会し、大人になってからこんなに心の友ができるとは思わなかった、という会員も多い。これからも、このつながりを大事に育んでいただきたい」と述べた。山口明夫代表幹事湯川智子産研代表世話人●産業調査研究会会員相互の交流や企業経営者が直面する諸問題に関する情報交換を目的とした会合。現在、約 1,200 人のメンバーが14グループに分かれ、昼食会形式での月例会合を開催している。メンバーによる多様なテーマでの話題提供や外部講師による講演、施設見学会など、各グループが自主的に活発な活動を展開する。
月例会見学会
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INFORMATION
ご寄付・コラボレーションのお願い
赤い羽根共同募金運動 80 回目
~地域福祉を支える力に~
赤い羽根共同募金は本年、全国一斉に実施されてから80 回目を迎えます。皆さまからお寄せいただいたご寄付は、地域の福祉活動や子ども・高齢者・障がいのある方、生活に困難を抱える方々への支援、災害時の支援などに活用されています。募金箱設置、寄付金付き商品、物品寄付、イベント連携など、企業・団体の皆さまと共にできる取り組みが多数ございます。会社など法人の寄付金は、指定寄付金として全額損金算入にできます。共同募金 80 回目の節目に、ぜひご協力ください。
こんなコラボレーションが可能です
募金箱設置
事務所・店舗・イベント会場などで、共同募金への参加機会を広げます。
物品寄付
在庫品によるご寄付を社会福祉施設などへお届けします。
寄付金付き商品
商品・サービスの企画販売を通じて、日常の購買を社会貢献へつなげます。
社会貢献プログラム
企業の特色やミッションを活かし、地域福祉を支える協働企画を行います。
研修・啓発
職員研修や人材育成の一環として、社会貢献マインドの醸成に活用できます。
共同募金 80 回目という節目に地域福祉を支える取り組みを、ぜひ一緒に形にしてみませんか。
お問い合わせ
東京都共同募金会
TEL:03-5292-3182 https://www.tokyo-akaihane.or.jp
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エネルギー政策委員会原子力の活用に向け、国内の規制動向と海外の知見を学ぶ会合を開催
エネルギー政策委員会は、安全性の確保を前提とした原子力の活用に向け、 9 月 25 日に原子力規制庁の金子長官を、 10 月 5 日にフランスの原子力関係者を招き、講演・意見交換を行った。
9月 25 日の会合では、金子修一原子力規制庁長官より「原子力規制の現状と今後について」をテーマに講演いただいた後、質疑応答を行った。原子力規制庁長官が経済団体の会合で講演・意見交換を行うことは初めてとのことで、原子力発電の重要性があらためて注目される中、わが国の原子力規制の最新動向について理解を深める機会となった。
10 月5日の会合では、駐日フランス
大使のご挨拶に続き、アンヌ=イザベル・エティエンヴル原子力・代替エネルギー庁(CEA)長官のほか、フランス電力(EDF)のベルナール・フォンタナ会長兼 CEOなど、フランスの原子力関係者5人よりご講演いただいた後、質疑応答を行った。電力の約7割を原子力発電でまかなう原子力大国フランスにおける原子力の戦略的位置付け、原子力に対する国民の受け止めに加え、原子力発電所の新設、核燃料サイクル、放射
性廃棄物の最終処分などに関する今後の方針について幅広い知見を得る機会となった。本会ホームページ掲載記事参照
9 月 25 日開催 10 月 5 日開催
金子修一原子力規制庁長官フランス原子力関係者および会合参加者
No.892 October 2026 経済同友 10
特集
共助資本主義第 6 回マルチセクター・ダイアローグ共助成長社会で取り組むこれから【後編】 03
CLOSE-UP 提言
地域共創委員会【提言】地下誠二・野田由美子委員長地方自治を持続可能にする新たな基盤「連携・分業型」の自治体間連携を地方自治・地方創生の新たな標準に 08 Seminar
第 1376 回会員セミナー経済安全保障と企業経営細川昌彦氏内閣官房参与(経済安全保障・産業政策担当) 13
C O N T E N T S
Doyukai Report
産業調査研究会 14 グループ合同懇談会を開催 14
Column 私の一文字
井上慎一「『縁』は未来を動かす力」 02 リレートーク西恵一郎「『誰と挑戦するか』を人生の羅針盤に」 12 私の思い出写真館橋本孝之「アジアの地平から考える多様性と未来」 19
赤い羽根共同募金運動 80 回目~地域福祉を支える力に~ 15 新入会員紹介 16 エネルギー政策委員会原子力の活用に向け、国内の規制動向と海外の知見を学ぶ会合を開催 18
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私の
アジアの地平から考える多様性と未来
橋本孝之山城経営研究所代表取締役社長日本アイ・ビー・エム名誉相談役
名古屋大学経営協議会委員としてのご縁から現総長の杉山様から声をかけて頂き、文部科学省の補助金による「 PhD プロフェッショナル登龍門フロンティア・アジアの地平に立つリーダーの養成」プログラムに関わり、モンゴル(2013/ 2015 年)やカンボジア(2016 年)での海外研修に同行した。このプログラムは、大学院 5 年間の一貫教育を通じて、専門性に加え、課題を見つけて解決する力、マネジメント力、国際性、異分野への理解、自己表現力を備えたグローバルリーダーを育てることを目的としていた。中でもカンボジア研修では、アンコール王朝の歴史や内戦・虐殺の過去、現在の社会基盤の整備状況・経済発展に伴う課題を学び、 20 年後のあるべき姿とそこへ至る道筋を考えることがテーマであった。私はトンレサップ湖畔のコンポン・プルック村を訪れ、電気のない環境で高床式の家々に暮らし、子どもたちが小舟
で学校に通う様子を目にした。観光化や過度な近代化とは異なる形で発展を続ける村の姿から、都市型の発展だけではない、新しい成長のあり方が必要だと感じた。翌日、プノンペンでは現地学生や名古屋大学の学生と講演・討論を行い、多様な価値観の中で学ぶことの大切さを実感した。同時に、自分自身の内なる多様性(Intrapersonal Diversity)を高め、知の組み合わせによって社会変革に貢献したいという思いを強くした。 SDGsの達成が容易ではない今、私たち一人ひとりが自らの視野を広げ、視座を上げ、多様性を身につけることが求められている。最後にこうしたアジアでの研修を支えているのは、名古屋大学が長年築いてきたアジア各国との信頼関係であり、法制度支援や人材育成を通じた地道な国際協力こそが、同大学の大きな強みでもあることを付け加えておきたい。
トンレサップ湖畔のコンポン・プルック村の小学校の教室で
プノンペンで、現地学生や名古屋大学の学生と講演・討論を行う様子
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経済同友
経済同友 2026 年 10 月 No.892 令和8年 10 月 30 日発行編集発行人/齋藤弘憲発行所/公益社団法人経済同友会〒 100-0005 東京都千代田区丸の内 1-4-6 日本工業倶楽部別館5F URL/https://www.doyukai.or.jp 編集/経済同友会事務局制作/CC アーク
